技能講習レベル1[初級編]

修復歴とは

  • 過去に交通事故その他の災害により、車体の骨格部位を損傷し、「修正」あるいは部品「交換」により修復したものをいう。
  • 流通過程での未修復の「現状車」も同様の判定基準を適用する。

車体の基礎知識

<外装の部位名称>

① ドアミラー

② フロントドア

③ サイドシル

④ フロントフェンダー

⑤ フロントガラス

⑥ ボンネット

⑦ ヘッドランプ

⑧ グリル

⑨ フロントバンパー

① リアドア

② リアフェンダー

③ ルーフ

④ トランクフード

⑤ テールレンズ

⑥ リアバンパー

<コーションプレート(CAUTION PLATE)>

  • コーションプレートとは通称の呼び名で、メーカーによっては「ネームプレート」との呼び名を使っています。
  • 製造者、エンジン型式、車台番号、カラーコードなどが記されているプレートのことで、アルミ製のプレートに打刻してあるものや、ステッカーのように貼り付けてあるものがあります。
    取り付け場所もさまざまな上に記載内容にも違いがありますので、必要な情報を読み取るためにはある程度の知識が必要となります。

※写真は一部加工してあります。

① 排出ガス規制記号

② 通称型式

③ フル型式

④ エンジン型式

⑤ 総排気量

⑥ 車台番号

⑦ カラーコード(外装色)

⑧ カラーコード(内装色)

⑨ 生産工場種別番号

⑩ トランスミッション型式

⑪ ディファレンシャル型式

⑫ オプションコード

<車台番号>

  • 個別の車両に1つずつ与えられる番号で、自動車メーカーあるいは運輸支局等以外では打刻してはいけません。
    車台番号の移植や改竄(かいざん)は道路運送車両法違反として処罰されます。

参考資料:車台番号改ざん

  • 番号付け替えによる改ざんの例です。
  • 道路運送車両法違反の車両となり、流通させてはいけない車です。

車台番号部分を切り抜き、新たに貼り付けたことが裏側から確認できる

国産メーカーの場合

型式に続けて -(ハイフン)5~7ケタの数字の組み合わせ

輸入自動車の場合

ISO(国際標準化機構)規格に準拠した17ケタから構成される車両識別番号(シリアルナンバー)が車台番号として登録されることが大半

<職権打刻>

  • 輸入車などを含め、ごく少数が販売される自動車や車台番号の識別が困難になった場合(大きな修復や盗難など)に番号を打ち直すことをいいます。
  • 2009年(平成21年)6月30日以前は打刻ポンチによる打刻でしたが、現在は金属プレートの貼り付けとなっています。

打刻ポンチによる職権打刻

プレート貼り付けによる方法

※写真は一部加工してあります。※画像はクリックすると拡大表示されます

検査とは?

  • 検査とは、基準に照らして適・不適や異状・不正の有無などを調べることです。
    一般ユーザー視点では、車の売却時の資産的価値(金額)を表わす言葉として、“査定”という言い方が一般的だと思われます。
  • 査定とは「調査決定すること」の意味があり、下取り・買い取りの際は専業者側が資産的価値を調査(検査)し、金額の算出(決定)が行なわれることになります。
  • 資産的価値を調査するためには目安が必要です。その目安は以下の要素で構成されていると考えられ、これらの因果関係によって査定価格は最終決定することになります。
  • ①経過年数や走行距離 ②機関系の状態 ③車両の内・外装の状態 ④重大瑕疵の有無 ⑤改造 ⑥市場での需要

経過年数や走行距離

  • 走行距離は、低年式過走行の車でも希少価値が高くて影響を受けにくいものや、高年式でも走行距離が多ければマイナス要素となるなど、判定するにあたって一定の決まりごとはありませんが、金額を算出する上ではある程度の目安が必要となります。
    走行距離以外の要素が同じ条件の車を比較するとなれば、走行距離の少ない方に高値が付くのは普通と考えられるため、十分に考慮する必要があるからです。
  • ※ステッカーには交換時の距離や実施年月日、
    実施事業所などが記載されます。

  • 自動車はほとんど乗らないよりも、毎日乗っている方が調子良かったりするものです。
    走行距離が極端に少なかったり多かったりすると、他の要素との因果関係(機関的な不具合など)を考えることにもつながりますので、走行距離と年式のバランスにも注意しましょう。
  • 自動車を販売する際はその車の走行距離を明確にしなくてはいけません。
  • 積算走行距離(ODOメーター)を交換した場合、それを証明することが義務付けられています。メーター交換車両には、社団法人自動車公正取引協議会作成のメーター交換を表わすシールを貼り付けなくてはなりません。これは自動車のセンターピラーに貼り付けることになっています。

機関系の状態

  • ここでは動力伝達装置(パワーユニット)、制動装置(ブレーキシステム)、操舵装置(ステアリングシステム)、動装置(ミッション)、懸架装置(サスペンション)、電装品 などをいいます。
    どの構成部分に関しても、不具合がある場合は専門的知識が必要となります。
  • 限られた時間で車をチェックしなくてはならない環境においては、できる限りの作動確認をしましょう。
  • 装備されているものが正常に作動するか? この確認には元の状態を知っておく必要があります。
  • エアコンやパワーウインドウなどの電装品の作動不良は、後に高額な費用がかかることもあるので注意して確認しましょう。

<機関の状態の確認>

① エンジンのかかり具合・異音・メーター内警告灯の確認

② ミッションの状態(タイムラグ・ショック)

③ パワーステアリングの状態(引っ掛かり・異音)

④ エアコンの状態(冷え具合・コンプレッサーの作動状況・風量)

⑤ 電装品の作動確認(パワーウインドウ・電格ミラー・オーディオ・サンルーフ等)

⑥ オイル漏れの有無

※機関系の症状は、冷間時と暖気時で違いがあるので注意が必要です。

車両の内・外装の状態

  • 内装は目に「見えるもの」の判定となるので特別な技術は必要ありませんが、ダメージは部品の破損や欠品だけでなく“臭い”など「見えない」ものもあります。
  • 部位によっては価値的に大幅なマイナス要素となり得るので、見極めも必要です。
  • 内装のチェックでは見えない瑕疵から重大な瑕疵を見つけ出すこともあります。
    たとえば、車内がカビ臭いと感じた場合、後ろ損傷によるトランク内の雨もれ、サンルーフ回りから雨もれ(車体のゆがみ?)などと想像することから結論につながることもあります。
    五感と想像力をフル回転させましょう。
  • 外装のキズや凹みも車の価値を下げてしまいます。
  • 資産的価値の視点だけでなく、保安基準に照らし合わせて確認しなくてはならない灯火類やタイヤの山、ガラスの割れなども最終的値付けには影響しますので、見落としのないよう確認する項目を区切って見ていくのもよいでしょう。
  • キズや凹みのピックアップには特別な技術は必要ありませんが、角度によって見づらいものもありますので、色々な角度から見るようにします。
  • 大きな凹みは損傷部位によっては重大な瑕疵に繋がる恐れもあり、それなりの知識が必要となります。
  • 車両の状態を把握するにあたり、内装・外装・機関・社外品の有無を確認する必要がありますが、これらは新車状態をベースとして比較をする作業になります。

<内装の状態>

内装はそれぞれの汚れ・傷・欠品などのダメージを確認していきます。

① 室内のニオイ(タバコやペットのニオイ)

② シートの状態(ヘタリ・スレ・コゲ・キレ)

③ ドアやピラーの内張りの状態(キズ・キレ・コゲ・ウキ)

④ ダッシュボードの状態(キレ・ビス穴・ウキ・のり跡)

⑤ 天張りの状態(コゲ・タルミ・汚れ・加工穴)

⑥ コンソール・シフト廻りの状態(キズ・コゲ・ペイントハゲ)

⑦ フロアーカーペット(キレ・コゲ穴・汚れ)

⑧ ヘッドレスト・シフトノブ・オーディオ等の欠品の有無

※においから重大なダメージの発見につながる事もあり注意が必要です。
(カビ臭い等のにおいがした場合には、冠水や歪みからくる雨漏れなど疑われます)

※ペットの毛汚れや消火器の粉などは、シートの隙間やシートレールに残ることが多いので注意が必要です。

<外装の状態>

  • 外装のキズや凹み・補修跡などのダメージを確認していきます。
    (補修に関しては「技能講習レベル2[外装編]」で学びます)
  • 外装の瑕疵の状態を把握するためには、あらゆる角度方向から確認する必要があります。
  • ボディから一歩離れるなどして、1つのパネルを見るだけではなく車両全体を透かして見ることも必要です。

※車に近寄りすぎると、手前を見落とす危険が大きくなります。いろいろと位置を変えながら見るようにしましょう。

◎外装のダメージ例 ※画像はクリックすると拡大表示されます

タイヤの確認(残り溝)

  • タイヤの残り溝は、スリップサインが出て(タイヤ接地面と面一の状態になって)おおよそ2分山といわれています。
  • スリップサインはウォールの△印の部分にあります。

タイヤサイズの読み方

① タイヤ幅

② 偏平率

③ タイヤ構造

④ リムの直径

⑤ 荷重係数(ロードインデックス)

⑥ 速度記号(ロードレンジ)

タイヤ製造年週の読み方

2309 → 2009年23週製造

キズ①
キズ②
凹み①
凹み②
補修跡(ゆず肌パテ目・Pたれ等)①
補修跡(ゆず肌パテ目・Pたれ等)②
補修跡(ゆず肌パテ目・Pたれ等)③
補修跡(ゆず肌パテ目・Pたれ等)④
補修跡(ゆず肌パテ目・Pたれ等)⑤
補修跡(ゆず肌パテ目・Pたれ等)⑥
錆・腐食①
錆・腐食②
色褪せ・色はげ①
色褪せ・色はげ②
キレ・割れ①
キレ・割れ②
社外品有無(足回り・マフラー・ホイール等)①
社外品有無(足回り・マフラー・ホイール等)②
欠品部品・穴
フロントガラスの飛び石・ヒビ・割れ・傷①
フロントガラスの飛び石・ヒビ・割れ・傷②
レンズ類・ドアミラーのキズ・割れ
タイヤのひび割れ
ホイールのキズ・歪み

見落としやすい部分として※1台1台違いますので、よく確認して見る必要があります。

サイドシルのキズ・凹み
リアフェンダー・フロントピラーアウター上部のキズ・凹み
ルーフのキズ・凹み

重大瑕疵の有無

  • 製造されてからどのような経緯で現在に至るのか? それを車の状態から判断しなければならないため、ある程度の情報と知識が必要となります。
  • 重大な瑕疵には事故修復歴はもちろんですが、天災(冠水や雹害)にあった車や人災(火災や消火器散布)などがあります。
    どれも一度ついた判定は覆ることがなく、現存する上では付いて回る欠点となります。
  • 事故修復歴は修理の状態や度合いによって本来の基本性能(安全上、運動性能上)を下回るようなことも考えられますので、しっかりと確認しましょう。
  • 冠水は水に浸かってしまった車のことをいいますが、電装品や動力系などにどのような不具合が発生するかわかりません。
    判定する上では、車内に泥水等が侵入した痕跡の有無といった大まかなルールはありますが、明確な基準があるわけではないので、注意深く確認していきましょう。
  • 雹害(ひょうがい)は、雹によって外装に無数の小凹ができてしまう状態をいいます。
  • 外装の評価的価値を下げてしまうだけでなく、修理方法によっては修復の判定につながる場合もありますので注意深く確認しましょう。(現行の判定基準ではルーフ交換は修復扱いとなります)
  • 火災車両は回復させるまでに高額な費用がかかる可能性も高く、また消火器散布に至っては室内に散布が確認できた場合、電装品に致命的なダメージを与えている可能性が非常に大きくなります。
  • 痕跡は手の入らない所に残ります。シートとコンソールの間など、手の入りにくい所は特に注意深く確認しましょう。

<修復車の定義>

修復歴とは

過去に交通事故その他の災害により車体の骨格部位を損傷し、「修正」あるいは部品「交換」により修復したものをいう。
流通過程における「現状車」も同様の判定基準を適用する。

※NAK修復歴判定マニュアルより抜粋(骨格部位名称については「修復歴基準について」のページをご覧ください)

  • 修復車の考え方には一般ユーザーと自動車業界と認識のギャップがあると思われます。
    ユーザー目線で言えば、“ぶつけたから事故車”ですが、自動車業界的には“車体の骨格部位に損傷”がある車が修復車になります。
  • 判定するにあたっては、基本の考え方の中に以下の2項目が含まれています。
  • 1. 「ボルトで取り付けられているもの」の交換は修復にならない。

    2. 「外部または外板を介して」車体の骨格部位を損傷しているものが修復扱いとなる。

    この2つは前提として覚えておいてください。

  • 走行中に「ぶつけた、ぶつかった」で、骨格に影響を与えたものが修復車ということになります。「整備していて工具で骨格を曲げてしまった」や、改造する上で「骨格を切断加工した」などは修復扱いにはなりません。
    ただし、その部位を元の状態に直そうと手を加えた段階で、修復扱いになる可能性は極めて高くなります。初めて対峙した車の“過去の状態”が分からない以上、客観的に関連付けて判断することになるためです。
    修復の判定には根拠となる事柄を精査し、知識と技術で判断することになります。

改造

  • 改造には自動車の価値を上げるものと下げるものがあります。
  • 付加価値を付ける改造(キャンピングカーや架装車)は保安基準の適合の有無を確認しましょう。
    不適合であれは付加価値を下げてしまう結果となり得ます。
  • 特殊用途や志向によって改造されたものはニーズも限られたものが多く、そのあたりも考慮しなくてはなりません。
  • 機関系の改造を施している車両は、傾向として修復扱いとなることが多いので注意して確認しましょう。
    前項目でも触れたように、そういった改造車両は“修理”しただけなのに“修復”と判断されることも多々あるためです。

市場での需要

  • 専業者による買い取り、下取りの際に要となるのが「相場」だと思われます。
    相場はその時の需要や流行、地域によっても違いますので、常に新しい情報を入手することが大切です。